TVCMの各要素が、ブランド検索・価格検索に与える影響に関する論文を読んだ
論文メモ。
Journal of Marketingの2019年論文「Immediate Responses of Online Brand Search and Price Search to TV Ads」を読んだ。
概要
TVCMを打ったときのブランド検索、価格検索への各要素の影響を調査する内容。
予測というより、どういう変数がどれくらいインパクトがあるのか?という方向。
TVCMの検索への影響予測だとGoogleから出てる「TV Impact on Online Searches」とかか?
ネットでの動きとして、Googleでのブランド名検索数を目的変数にしたモデルと、Autometrics(自動車のカカクコム的なサイト)での商品価格検索数を目的変数とした2モデルを作成している。
自動車は大きい買い物だからなのか、ブランド名検索・価格検索ともに起こりやすいという研究を踏まえてこの研究では3自動車企業のブランドを対象として調査している。
また、ブランド名検索と価格検索の2つで考えているのは商品購入プロセスの(AIDMAみたいなやつ )位置の違いによる差をみるため。
先行研究との比較
CMの検索へ影響しそうな要素(競合情報やCM自体のクオリティ、視聴者情報など)を多くモデルに組み込んでいること、また粒度が分系と細かいことが優位性となっている模様(表1)。それぞれのデータはいろいろな会社から貰っている様子。
モデル
どちらのモデルも目的変数が違うだけで、説明変数は分粒度での
- M分前までの、調査対象ブランドのTVCM(全国放送)接触数 * 調査対象ブランドの効果に関わる特徴(CMのクオリティ(クリエイティブ)、出稿した位置、視聴者属性)
- N分前までの、競合ブランドのTVCM(全国放送)接触数
- N分前までの、調査対象ブランドのTVCM(地方局)の広告費
- N分前までの、競合ブランドのブランドのTVCM(地方局)の広告費
- N分前までの、調査対象ブランドのDealers Association価格?(ここはよくわからん)
- ベースライン(トレンド + ブランドのジャンル(ビッグワード)での検索数)
としている。簡易版が式(1)。
(1)の各項について、より詳細に記載したものを代入して増分を観た結果が(5)。
効果に関わる特徴は調査対象ブランドのTVCM(全国放送)以外の変数にも掛けたほうが良さそうだけど何故かけてないかは不明。データが手に入らなかった?
非線形最小二乗法を仮定すると、ブランド検索数はM=9, N=5、価格検索数はM=6, N=4がいい感じだと解析的にわかるとのこと。 全国放送と違い地方局が接触数ではなく広告費を用いている理由としては、単純にデータが手に入っていないから。接触数が手に入るならそれにこしたことはない。
効果に関わる特徴に書いている「CMのクオリティ」というのは、Metrix社が作成しているCMの印象調査的な結果で、「商品訴求やメッセージが伝わったか」「CMに好感を持てるか」「ブランドに好感が持てるか」の3項目をスコア化しているもの。
「出稿した位置」というのは、CM時間帯での先頭なのか、ゴールデンタイム(プライムタイム)時間帯なのか、どの局か、流れた番組ジャンルか
結果
- CMが流れると即効果が現れるが数分でもとに戻る
- 競合の検索結果にも影響がある。特にトップ企業は競合が流したときに検索される度が高い。例えば、トップのX社と2番手以下のA,B,C社がいる。A社がCM流すとX,B,C社どれも検索数が増えるがX社の増え方が特に大きい。
- 現実を考えると、A社のCM見て車買おうとしたときに他社も比較検討するし、特に一番先に思い浮かぶ他社はトップ企業なので直感的に納得の結果。
- この研究だと(例でいえば)A社が流したときB,C社への影響は同じくらい。ただ、B,C社の強さの差がわからないけど強さに差があったら検索増分はA>>>>X>B>Cなのだろうか?
ブランド名検索数と価格検索数への影響差
- ブランド名検索数と比べ、価格検索数の方が増分が小さい
- 商品購入プロセスにおいて価格検索は下流の方なので上流であるブランド名検索の方がCMの影響は強いと考えられるため(仮設)
- ただし、CMの内容以外の影響を等しくしてシミュレーションした結果、CMの内容によってブランド名より価格検索の方が増えることがわかったのでCMの内容依存っぽい?
- ブランド名検索数と比べ、価格検索数の方が検索数増加の影響時間が長い
- 価格検索は色々と考えることや操作など多いから検索が長続きしているだけな模様(仮設)
- CMのクオリティ評価軸の「商品訴求やメッセージが伝わったか」「CMに好感を持てるか」「ブランドに好感が持てるか」と、出稿した位置において、ブランド検索はどの項目でも有意になにかしらの効果があったが、価格検索ではあまり出ていない。
- 検索増分と同様に、商品購入プロセスにおいて価格検索は下流の方なので上流であるブランド名検索の方がCMの影響は強いと考えられるため(仮設)